公明党愛知県議員団の市川ひでお幹事長の質問にお答えをいたします。
本年十月の消費税及び地方消費税の税率の引き上げに伴い、さまざまな制度改正が予定されておりますが、これらにより来年度以降の本県の予算編成に大きな影響が生じてまいります。まず、歳入面では、地方消費税率の引き上げによる増収の一方で、地方法人課税の見直しに伴う法人県民税法人税割の税率の引き下げによる減収が見込まれます。また、歳出面では、本年十月から導入される幼児教育の無償化の影響が通年で生じるとともに、新たに県立大学や私立専門学校などを対象に、高等教育の無償化が開始されることとなります。制度の詳細を国の予算編成に委ねられた事項も多いことから、今後の国の動向を注視し、本県の歳入、歳出への影響をしっかりと見きわめるとともに、こうした制度改正の影響は、地方交付税の算定に反映される仕組みでありますので、交付税の必要な総額が確保され、地方の財政運営に支障が生じることのないよう、機会を捉えて国へ強く要請してまいります。
来年度も医療、介護などの扶助費の増加が続く一方で、円高の影響などにより法人二税収入の減収が見込まれることから、引き続き厳しい財政状況が続くものと認識しております。
このため、まずは本年度内の財源確保に取り組み、本年度当初予算で取り崩すこととした基金残高の回復に努めるとともに、行財政改革の取り組みを着実に進め、健全で持続可能な財政基盤の確立に努めてまいります。
次は、就職氷河期世代の活躍支援についてのお尋ねであります。
少子・高齢化が進行する中で、愛知県が持続的に発展していくためには、就職氷河期世代を含めた全ての人々が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていける社会を築くことが大変重要です。本県では、これまで若者の就職支援、職業訓練やリカレント教育、ひきこもりや生活困窮者への支援、さらには二〇一六年度から就職氷河期世代を対象とした職員採用試験を実施するなど、さまざまな取り組みを行ってまいりました。こうした取り組みをより一層推進するため、七月には関係局で情報を共有し、横断的に取り組みを進める庁内の検討組織を立ち上げたところであります。また、七月の全国知事会議においてプロジェクトチームの設置を提案し、私をリーダーとして、三十三道府県の知事で構成するプロジェクトチームが設置されました。そして、八月二十七日には第一回の会議を開催し、国が責任を持って取り組むべき事項を就職氷河期世代の活躍支援に向けた提言として取りまとめ、翌二十八日に私から厚生労働省や内閣官房などに要請してまいりました。就職氷河期世代への支援は、私が国会議員であったころからの長年の課題でありますが、人生百年時代と言われる中で、一人でも多くの方が希望する職を得て活躍していただくためには、厚い産業集積と安定した雇用環境を有する本県が大きな役割を果たしていかねばならないと考えております。こうした中、九月十三日には、愛知県が就職氷河期世代の方々の就職、正社員化の取り組みを官民一体となって推進する都道府県プラットフォームを全国に先駆けてモデル的に実施する地域として、厚生労働省から選定されたところであります。こうした取り組みも有効に生かしつつ、国や市町村、企業等と連携し、就職氷河期世代に寄り添った支援に全力で取り組んでまいります。
続いて、幼児教育、保育の無償化についてお答えいたします。
幼児教育、保育の無償化は、子育てに係る経済的負担を軽減するものであり、子育て世代を応援する大変重要な施策であります。無償化に向けて、県といたしましては、市町村や保育関係団体への説明会を開催してきましたほか、市町村の事務費やシステム改修費への助成など、実務を担う市町村の支援に取り組んでまいりました。また、市町村では、保護者や事業者への説明や周知、保育料を規定する条例の改正や、無償化の対象となる保育施設と児童の認定など、無償化に向けて必要な準備を進めてまいりました。県といたしましては十月一日からの無償化に向け、市町村と緊密に連携を図り、万全を期しているところであります。
次に、無償化による保育ニーズへの対応につきましては、今年度策定する愛知県子ども・子育て支援事業支援計画に無償化の影響を見込み、その上で必要となる保育施設の整備や保育士の確保を図り、待機児童の解消に取り組んでまいります。また、認可外保育施設の質の確保につきましては、今年度から新たに巡回指導や研修を実施するほか、職員を増員して指導監督体制の強化を図ったところであります。さらに十月末からは、立入調査結果を県のホームページで公表することにより指導事項の速やかな改善を促し、保育の質の確保、向上につなげてまいります。こうした取り組みを着実に進め、無償化の円滑な導入を図るとともに、安心して子供を産み育てることのできる社会の実現を目指してまいります。
次は、子育てにおける切れ目のない支援についてであります。
健やかな子供の成長のためには、妊産婦の方お一人お一人や、その御家族に寄り添った切れ目のない支援が不可欠です。市町村が設置する子育て世代包括支援センターは、妊娠、出産、育児に関する相談に保健師などが継続的に対応するなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援のための拠点であります。本県では、その設置促進と支援体制の充実に向け、未設置の市町村に対して設置を働きかけるとともに、設置済みの市町村に対しては妊娠、出産、育児に関する地域特有の課題を整理し、市町村の状況に応じた事業のあり方を検討するための会議を開催しております。また、妊産婦の方への効果的な支援のためには、市町村の保健及び児童福祉部門だけでなく、地域の医療機関などの協力が不可欠でありますことから、関係者が参画する会議を開催し、情報交換や連携を促進しております。さらに、複雑多様化する相談に適切に対応するため、保健師などの母子保健にかかわる行政の専門職や、地域の医療関係者などの資質向上を図るための研修を実施しております。こうした取り組みにより、現在、県内四十二市町において子育て世代包括支援センターが設置され、二〇二〇年度末までには全ての市町村において設置が完了する見込みとなっております。今後とも市町村と連携して、妊娠期から子育て期にわたる一人一人に寄り添った切れ目のない支援を行い、子供が健やかに成長できる日本一子育てしやすい愛知の実現を目指してまいります。
次に、SDGsの普及啓発や県内の市町村等との連携について御質問をいただきました。
SDGsは経済、社会、環境の国際的な目標であり、その内容は技術革新やまちづくり、飢餓や気候変動など多岐にわたっています。本県がSDGs未来都市としてSDGsを達成するためには、県民の皆様一人一人がSDGsへの理解を深め、SDGsを意識した行動を実践していただくことが重要です。このため、本県ではSDGsの認知度向上に向け、SDGsや未来都市計画のパンフレット等を作成して広く情報発信を行うとともに、SDGsを具体的に解説するセミナーや、SDGsを楽しみながら学ぶワークショップを開催したいと考えております。また、環境面からのSDGsの普及啓発と担い手育成のため、生物多様性を初めとする環境保全に積極的に取り組む企業、大学、NPOなどと連携したセミナーを開催してまいりたいと考えております。さらに、本県と同様にSDGs未来都市に選定された名古屋市、豊橋市、豊田市と連携した普及啓発イベントの開催や相互のPRを行うとともに、市町村職員向け研修会の開催などにより、県内の市町村へSDGsの取り組みを働きかけていくことも考えております。今後とも、国や市町村、企業や関係団体、大学やNPOなどと連携、協力し、大人はもとより次代を担う子供たちを含めたあらゆる方々を対象に、その年齢や関心の度合いなどに応じた学びの機会を提供することにより、SDGsの普及啓発に全庁を挙げて取り組んでまいります。
続いて、中小企業の事業承継支援についてお答えいたします。
経営者の高齢化が年々進み、今後、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えます。本県が今後も産業競争力を維持、強化していくには、事業承継をスムーズに進めることが重要な課題であります。本県では、二〇一七年十月のあいち事業承継ネットワークの立ち上げ以降、商工会議所の経営指導員などが経営者と相対して事業承継の気づきを促す事業承継診断をこれまでに約一万一千件実施したほか、専任の事業承継コーディネーター等を設置して各種セミナーの開催、士業専門家と連携した個社支援等に取り組んでまいりました。
今後はこうした事業承継の気づきを与える取り組みに加え、事業者が個々に抱える経営課題への対応といった踏み込んだ支援が円滑な事業承継を進める上でますます重要になります。そこで、個々の経営課題の解決に向け、士業団体の協力を得て、中小企業診断士や税理士、公認会計士等の知見やノウハウを十分に活用した専門家の派遣を伴う個社支援により一層力を入れてまいります。加えて、商工会、商工会議所、金融機関等の支援機関に対して事業承継に関する専門的な知識やスキルの向上を目的とした研修会やセミナーを開催することにより、個社支援に適応できる人材の育成も行ってまいります。こうした取り組みを通して、円滑な事業承継を地域全体で着実に進めていきたいと考えております。
次は、あいちトリエンナーレ二〇一九についてであります。
これまでの経緯等につきましては、九月二十日の提案理由説明におきまして述べさせていただいたところでありますが、九月二十一日に開催されました表現の自由に関する国内フォーラムでは、出展の作家さんや県民の皆様からさまざまな御意見をいただき、また、昨日、二十五日に開催されました第三回のあいちトリエンナーレのあり方検証委員会におきましては、私に対しまして、事実関係を丹念に検証、整理し、中間報告をいただいたところであります。そのまとめによりますと、展示作品を見ていない人がSNS上の断片画像を見て電凸攻撃に及んだこと、二次的影響として、海外作家等は検閲と批判、今後のあいちトリエンナーレのみならず、国内の芸術祭、国公立美術館への海外作家の出品拒否を誘発しかねないリスクがあるとの現状認識がされた上で、芸術祭全体としては今のところ、この不自由展問題を除けば成功しているとされております。それは、これまでに入場者数が約四十万人と前回を約二割上回る、現代的で時代性を帯びた企画作品が多く、各方面から高評価を得ているとされました。不自由展の企画と展示の妥当性については、次のとおり報告されました。
過去に禁止となった作品を手がかりに、表現の自由や世の中の息苦しさについて考えるという着眼は今回のあいちトリエンナーレの趣旨に沿ったものである。しかし、でき上がった展示は鑑賞者に対して主催者の趣旨を効果的、適切に伝えるものだったとは言いがたく、キュレーション見せ方、展示実施ですが、に多くの欠陥があった。特に強く批判を浴びた三つの作品はいずれも作者の制作意図等に照らすと展示すること自体に問題はない作品だったが、作品の制作の背景や内容の説明不足などや展示の場所、展示方法が不適切、すなわちキュレーションに失敗し、またSNS写真投稿禁止の注意書きを無視する来場者が続出したため来場していない人たちから強い拒絶反応と抗議を受けた。混乱を防ぐために入り口にSNS写真投稿禁止と表示したが、それでネット上の流布を抑止できるという想定は、そもそも非現実的だったし、それでも徹底して禁止するという仕組みを考えなかったなど、総じてSNSによる拡散を抑止しようとする意欲と決意が希薄だった。予算不足と準備の時間の不足が重なり、シンポジウム等の事前のエデュケーションプログラムが企画されなかった。また、展示をガイドツアーで行う等の工夫を考える時間的余裕もなかった。展示された二十三作品の過半が実は二〇一五年の不自由展に出されなかったものだった。それにも関わらず芸術監督は不自由展実行委員会に展覧会内展覧会の形式で展覧会の開催を業務委託したが、他の方式を事前に検討しなかった。また、準備プロセスの問題として、誤解を招く展示が混乱と被害をもたらした最大の原因は、無理があり、混乱が生じることを予見しながら展示を強行した芸術監督の行為にある。
そしてその背景にはそれを許す組織体制上の数多くの欠陥があった。芸術監督の不適切な判断や行動に起因する今回のようなリスクを回避、軽減する仕組み、ガバナンスがあいちトリエンナーレ実行委員会及び県庁に用意されていなかった。不自由展は不自由展実行委員会との協議を経て開催三日を経て中止された。なお、これは脅迫や電凸等の差し迫った危険のもとの判断でありやむを得ないものであり、表現の自由、憲法第二十一条の不当な制限には当たらない。と整理しています。その上で、展示の再開に向けては、条件が整い次第、速やかに再開すべきである。脅迫や電凸等のリスク回避策を十分に講じること。展示方法や解説プログラムの改善、追加、さまざまな背景を説明した上でガイドツアー方式で鑑賞をいただく、など。写真撮影とSNSによる拡散を防ぐルールを徹底する。なお、特に海外作家へのコミュニケーションのやり方に留意すべきである。一部の海外作家はこれまでの海外事例に照らし、今回の中止判断がテロ対策や安全管理を表面上の理由とする実質的検閲と認識。県民及び出展作家への徹底した情報公開と意見聴取を続けるべきである。今回の事案は来場者や県民よりも来場していない人たちがネット上の断片映像や誤った情報に接して混乱を招き、また、県民に不安を与えた。
また、出展作家に対しても、中止の連絡や説明等が遅れ、また不十分であった。再開に向けては、県民及び作家から広く賛否両論を聴取し、それを公開し、双方が反対の考え方を持つ人々の意見をよく聞くべきである。さらに、次回以降のトリエンナーレに向けて、運営体制を抜本的に見直すべきである。あいちトリエンナーレの場合、県庁が中心とならざるを得ないが公金を使う難しさを解決する方法として例えばアーツカウンシル第三者委員会というものでありますが、アーツカウンシルを設けるべきである。などの御提言をいただきました。これらの御提言を真摯に受けとめ、早速、本日からトリエンナーレのあり方検証委員会をあり方検討委員会へと改組し、再開を目指してその具体的な条件について検討し、整理していただきたいと存じます。そして、それを踏まえて、表現の不自由展実行委員会及びその関係者、作家、アーティストの皆さんとしっかりと協議、話し合いを進め、我々として最善を尽くしてまいりたいと考えております。
また、検討委員会には十月以降、次のトリエンナーレの体制等についても検討し、適切な提言をいただきたいと存じます。そして、十月五日、六日には国際フォーラム情の時代における表現の自由と芸術を開催し、表現の自由に関する新しいルールを模索し、できれば世界の人々に対して、表現の自由を守るためのあいち宣言(あいちプロトコル)を提案したいと考えております。いずれにしましても、十月十四日までの残りの会期を最後まで多くの方々に最先端の芸術作品を楽しんでいただけるよう、安全・安心な運営に全力で取り組んでまいります。
次に、地域強靱化計画についてのお尋ねであります。
強靱化の取り組みは、災害から得られた知見や社会情勢の変化などを反映し、不断の見直しを行っていくことが重要であり、本県においても国の重要インフラの緊急点検結果や基本計画の変更を踏まえ、災害のリスクに即して脆弱性の再評価を進めているところです。
今後はこの結果をもとに河川・海岸堤防や道路、電力、ガスなどの重要インフラのさらなる強化、広域的な防災拠点の整備、防災教育や人材育成の充実など、県民の命を守り、社会機能と産業を維持していくために必要な施策を盛り込んでまいります。さらに、国の三か年緊急対策を踏まえ、中長期的な視点から数値目標を見直すなど、強靱化施策の充実と加速を図り、本年度内の完了を目標に見直しを進めてまいります。加えて、県土全体の被害を最小限にとどめ、県土の強靱化を実効あるものとするためには、国や県はもとより、各地域の強靱化を担う市町村における取り組みも不可欠であります。県としても、私が本部長を務める全庁的な愛知県地域強靱化推進本部のもとに新たな支援体制を設け、それぞれの地域が直面する災害リスクの解消に必要な施策情報を提供するなど、市町村における地域計画の策定を促進してまいります。今後も県として強靱化施策を着実に推進するとともに、県内市町村の取り組みを牽引することで、県土全体の強靱化に向け、総力を挙げてしっかりと取り組んでまいります。
続いて民間ブロック塀等の対策についてであります。
本県では、昨年の大阪府北部地震後に、特定行政庁六市を除く四十八市町村と連携して、市町村が定めた重点対策区域を対象に安全点検パトロールを実施いたしました。このパトロールにおいて点検した四千八百カ所のうち約七割の三千二百七十五カ所で不適合と判定され、市町村により対策の進み方に差があるものの、本年八月末までには四十八市町村の合計二百四十七カ所において、除却等の対策が行われたところであります。県といたしましては、より一層の対策が進むよう、成果を上げている戸別訪問などの実施について、さらに市町村に働きかけてまいります。また、民間ブロック塀等の対策を促進していくためには、資金面の支援も重要であります。大阪府北部地震前の二十二市町から新たに二十八の市町村で補助制度が創設され、現在、五十の市町村でブロック塀等に対する補助が実施されております。こうした中で、本県では、危険なブロック塀等の対策に取り組む市町村を支援するため、今年度から民間ブロック塀等除却費補助金を創設いたしました。八月末現在で五百二十三件、総延長約九キロメートルに対して補助を行っており、着実に民間ブロック塀等の対策を進めているところでございます。今後も引き続き危険なブロック塀等の除却などを促すとともに、相談窓口や資金面の支援等により、市町村や建築関係団体と連携して、民間ブロック塀等の安全対策にしっかりと取り組んでまいります。そして、私から最後の答弁となりますが、子供、若者の自立、活躍についてお答えをいたします。本県では、昨年八月にあいち子ども・若者育成計画二〇二二を策定し、子供、若者が健やかに成長し、それぞれ自立、活躍できる社会を目指してを基本理念に、さまざまな取り組みを行っております。
中でも、困難な状況を抱える子供、若者の自立に向けた支援につきましては、関係機関が連携し、継続的な支援を行うことが必要であることから、教育、福祉、雇用等のさまざまな分野の公的機関や団体等がネットワークを形成し、効果的な支援を行う子ども・若者支援地域協議会の市町村への設置を促し、現在、十六の市町に設置いただいております。
引き続き、協議会の立ち上げプロセスや運営のポイント等について学ぶ研修会や会議を開催することによりさらに多くの市町村に設置していただき、子供、若者に寄り添った支援体制を整備してまいります。また、夢や希望を持った子供、若者の活躍を後押しする取り組みといたしましては、今年度新たに、高校生が社会問題等について意見交換する、未来をつくるユース会議を七月に名古屋と豊橋で開催いたしました。会議で取りまとめた提言は、十二月に開催する子ども・若者育成支援タウンミーティングにおいて、高校生の代表から発表をしていただきます。タウンミーティングでは、実際に困難を乗り越えて活躍されている著名人をお招きし、子供、若者への応援メッセージを届けていただくとともに、提言を発表した高校生も参加して、パネルディスカッションを実施することといたしております。
今後も、愛知の未来をつくる子供、若者が夢や希望を持って前進することができるよう、しっかりと取り組んでまいります。
以上、市川ひでお幹事長の御質問に対して御答弁申し上げました。